Episode4|農業の道へ
果実園なかむら
右も左も分からない
若干25歳で仕事を辞めて須坂(すざか)へ戻った10代目。
やる気や決意は十分にあったが、農業に関してはお手伝い程度の経験しかなく、全くの素人同然だった。
そのまま家業を継承する選択肢もあったが、今までのやり方では限界があると感じ、他の農家さんのもとで修行をすることにした。
お世話になった農家は受賞経験もある凄腕だった。
早く一人前になりたくて
修行の身なので、遊ぶ暇など全くない必死な毎日を送っていた。
その中でも一番難しいのは剪定であった。
剪定とは昨シーズンぶどうを収穫するために必要であった枝のうち、今シーズンで使わない枝を切り落として、必要な分だけを残す仕事である。
これは一見簡単に聞こえるが奥が深いのだ。
枝を切りすぎると収穫量が減ってしまい、収入が減ってしまう。
逆に残し過ぎてしまうと、樹木が持っている養分に対して、使う養分が多くなってしまうので、最悪の場合枯れてしまう。
その絶妙なバランスを見極めることが、ぶどう栽培の醍醐味でもあるのだ。
10代目は信頼する師の教えを信じ、教えられた通りに管理をした結果、収穫時期には例年に比べ大きく、甘い実がたくさんなったのである。
師を信じ、新しい取り組みにも抵抗しない強い精神力こそが、この後のなかむら果実園の発展を支える礎となるのであった。
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